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その18 悲劇の鴨左衛門狐の話

信夫の三狐の一匹である、石が森の鴨左衛門の話は少々悲劇的です。
信夫山の北、鎌田の庄屋の家に男の子が生まれました。とても利口な子どもで、大きくなるにつれ、ますます神童ぶりを発揮し、その名は仙台まで届いたそうです。
すると、岩沼の竹駒神社から、ぜひ宮司にと使者がやってきました。喜んだ家族は祝宴を開き、鴨左衛門を送り出そうとしましたが、今度は京都の神社から「式典があるから出向くように」という便りが来たのです。

そこで、これはますますすごいことになってきた。と本人も喜び勇んで出発したのでした。
さて、鴨左衛門がようやく京都の神社にたどり着くと、そのときにはもう、先に来た人たちが黒山になっていました。そこで頭のいい鴨左衛門が、要領良く後ろからヌーッと手を出した途端、いきなり手を掴まれ正一位のハンコを手のひらにピタンと押されてしまったのです。
驚いて帰ってきた鴨左衛門は祝宴でも油揚げしか食べず、やがて疲れたと寝込んだ姿を月明かりで見ると、神罰に当たり耳まで口の裂けた狐そのものになっていました。「化け物だ!」とみんなに追い出された鴨左衛門は泣く泣く石が森に住みつき、それ以来、根性がねじ曲がり、小ずるい、意地悪な狐になってしまったのだそうです。