その4 信夫山の「ねこ稲荷」のいわれ
今回は、信夫山のご坊狐(きつね)と、「ねこ稲荷」の伝説です。昔、“信夫山の三狐”といわれた「信夫山のご坊狐」、「一盃森の長次郎」、「石が森の鴨左衛門」。3匹は信夫山の狐塚(現在の福島税務署辺り)に集まり、いろいろと悪巧みをしていたそう。中でもご坊狐は人を化かすのが上手で、御山の和尚さんに化けては町の魚屋に現れ、木の葉の小判で魚を買って持ち帰ってしまうなど、悪さをしていました。
ところがある日、鴨左衛門に「自慢の尻尾で釣りをすれば、魚などいくらでも釣れる」とだまされ、黒沼(現在のハローワーク福島前辺り)に尻尾を垂らして魚を待っていると、真冬の寒い夜だったので、たちまち尻尾は凍りつき、抜けなくなってしまったのです。力任せに引っ張ると、なんと尻尾は根元から切れてしまいました。
自慢の尻尾を失ったご坊狐は、神通力が無くなり化けることができず…。落胆するご坊狐を諭したのは、多くの迷惑をかけられた和尚さん。そこでご坊狐は、御山の人たちに恩返しをするため、蚕を守る守り神になりました。当時、養蚕が盛んだった信夫山では、蚕を食い荒らすネズミが大敵。見事にネズミを退治したご坊狐は「ねこ稲荷」として信仰を集め、いつからか“猫を幸せにする稲荷”として愛されるようになったのでした。